アートセラピーの5分類

心理療法系
専門的な診断と治療の必要な人、すなわち具体的に行動面や社会生活に問題が生じている人、また精神疾患と診断される(診断され得る)人が対象である。問題・症状の緩和や治療の中心的あるいは補助的な手段として行われる。目指す内容として自己探知系と重なる部分が多い。
自己探知系
比較的健康度の高い成人を対象に、気晴らし・ストレス解消・保養・癒し・自己解放・自己発見・自己肯定など促すことが主な目的である。自分の本当の気持ちや感情に気付き認めていく、過去や現在の自分を肯定する、現在抱えている問題に向き合っていく、自分の性向・気質を知る、QOLを向上させる、精神疾患を予防する、といったことが目指される。心理療法系につながる場合もある。
リハビリ系
脳機能障害の人を対象に機能回復、症状の進行抑制・緩和・安定などを行うことが主な目的である。高齢者を対象にした認知症の予防、認知症の進行抑制・緩和・安定も含まれる。ADLや言語機能の向上、障がいの自己受容を目的に作業療法士が主導するリハビリテーションを補助する、あるいは牽引するものとして活用する。心理面にも関わるが、基本的に心理療法とは異なる。
表現支援系
知的障害や精神障害のために通常のコミュニケーションや社会生活が困難な人、あるいはそれらの症状の表れとして内発的に表現活動を行なう人を対象とする。非言語的な表現行為によって外部世界と接触・交流ができたり、充実した時間を過ごすことができたりすることで、QOLを向上させることが主な目的である。その結果としての制作物がアート市場に出る可能性が最も高い。心理面にも関わるが、基本的に心理療法とは異なる。
発育支援系
発達段階にある子ども・若者を対象とする。遊びの要素のある自由な表現を通して、抑圧からの解放・自己表現の促進、自分に自信を持たせる、自己肯定感を高めるなどが主な目的である。
種々の障がい児に対しては、社会的自立、QOLの向上を目的とする「療育」の一手段となる。非言語的な表現方法の獲得や発語・発話能力の開発などを目指す。心理療法につながる場合もあるが、基本的に心理療法とは異なる。いずれにも子育て支援の要素が含まれる。

「アートセラピーの4系統」[石原2012](甲南大学人間科学研究所・アートセラピー調査報告書28頁)を改訂(2018)